米軍で使われているM998 HUMVEE(High Mobility Multi-purpose Wheeled Vehicle) 汎用輸送車です。1941年から、長期間にわたって使われてきたM151 Jeep MBに代わってつくられ た軍用車両です。 Jeep MBと比べてみると40年以上の隔たりがあるにもかかわらず、どことなく似ているのはJeep MBの優秀さを尊重した結果か、あるいはMBのイメージを積極的に踏襲したのでしょう。軍用車両と いえどもイメージ戦略は重要と思われます。 イラストにしたHUMVEEはドア、ルーフなどを取り払い、ウィンドシールドも倒した状態もので、 1986年の映画「トップガン」で主演のトム・クルーズが基地の中を乗り回していたタイプものです。 40年後に造られた新しいJeepはゆったりと大きく、イラストのアングルでは獣のようにしなやか で、いかにも強そうなデザインであることが良く分ります。その印象を裏付けるように、最強の軍用 車両としての能力を発揮するための特別の装備を随所に備えています。ラダーフレームにボディとエ ンジン、足回りを組み付けた通常のトラックと変わらない基本構造ですがボディ内部の高い位置に設 定されたフレーム。ハブ内部のギアを介して高い位置に持ち上げられたドライブトレーン。ディスク ブレーキはボディの中に取り付けられたインボードタイプ。これらによってボディの下面は真っ平ら になり、高い踏破性を確保したといいます。フロントホイールのはるか後方にマウントされたエンジ ンは完全な防水仕様となり、ドライバーが水没しない程度の水深の中を走破する。見るからに頑丈そ うなダブルウィッシュボーンのサスペンションは、前後で全く共通の部品を使うという大胆な設計で す。フロントのオーバーハングはゼロに近い。つまり、ほとんど垂直の壁を登ることができます。た だし、ホイールベースより高い壁ではひっくり返るし、登り切ることは不能ですが。 Jeep MBと比べると大変大きいのですが、この巨大さにも実は理由があります。イラク戦に投入さ れ、戦闘車両として実戦を経てからはボディ全面に防弾装備を施すなど大きな変更を次々と行ってい ます。車に限らず、航空機や船舶などの軍用機材は前線に出てから、新たな装備を追加することがた びたびあります。そのためにはサイズ的にも重量的にも、充分な余裕がないと、たちまち使えない代 物になってしまうからです。 この様な巨大なボディですが乗員の着座スペースは極めて狭いのです。断面を見ていただくと、中 央のフレームに挟まれたメカ部分が大きくキャビン内に張り出していて、乗員はその脇の隙間に収ま ります。軍用というのは実に過酷な代物です。 HUMVEEを真似た車両があちこちでつくられ、現代軍用車両のお手本となりました。前カリフォル ニア州知事シュワルツネッガーの希望によって実現したといわれる民間型がHUMMERです。 全長 4840mm × 全幅 2160mm × 全高 1870mm 、重量 2340kgTOP画面に戻る